ようやく『崖の上のポニョ』(原作・脚本・監督 宮崎駿)を観た。
ポニョは可愛いけれど、これは宗介と、宗介のお母さんの物語。この親子がとっても素晴らしい(以下、結末がわかってしまうが、悪しからず)。
アンデルセンの『人魚姫』は、王子と結婚できず、海の泡になってしまう。王子が人魚姫を好いているとか嫌いとかの以前に、「身分」が邪魔をする。
ディズニーの『リトル・マーメイド』は、王子との間に愛が芽生え、結婚できる。愛こそすべて、愛があれば報われる。
現代の人魚姫ポニョは、人間の世界の庶民の子ども、宗介を好きになり、宗介のところに来る。宗介も、ポニョが好き。『人魚姫』や『リトル・マーメイド』と決定的に違うのは、宗介が、魚の姿のポニョも、半漁人の姿のポニョも、人間のポニョも好きで、どんな姿をしていても、なんの抵抗もなく、「ポニョ」として受け入れることだ。
これは、すごい。いままでのおとぎ話なら、たとえば魔法にかけられた王子がカエルの姿で姫に愛を告白しても、カエルの姿のままでは姫には嫌われる。『美女と野獣』でも、野獣が美女の心をほどくには時間が掛かる。けれど、宗介は「僕も好き!」で万事了解なのだ。
後半は宗介の成長物語と位置づけられているようだが、宗介は試練を試練と思っていない。淡々と、やるべきことをやるだけだ。むしろこの一件で成長させられるのは、試練を与えたはずの海に住む人たち(とくにポニョの父)である。
宗介の母リサは不思議なことがいろいろあっても、動じずポニョを受け入れる。リサの心の広さ、強さは感動的だ。彼女はデイケアサービスセンター「ひまわりの家」の職員で、「ひまわり」の隣の保育園に通っている宗介は、「ひまわり」の利用者のおばあさん達とも仲良しという設定。宗介の父は船乗りで留守がちだが、リサと宗介を愛しているし、宗介も父を尊敬している。このような両親と環境があって、宗介は、異形の者であるポニョのことも、当たり前のこととして「好き!」と言えるのだろう。
母子の気負いのなさは、実はこれからの共生社会の大事なポイントでもある。リサや宗介のように先入観を持たずに他人を受け入れられる人が増えたら、こどもたちはもちろんのこと、高齢者や障碍者、いや全ての人がもう少し生きやすくなるだろうと思わずにはいられない。
いろいろなメディアで紹介されていて主題歌も大ヒット、話題になっているエピソードもたくさんあるが、なにより奧が深い物語だった。
作品のキャッチコピーは、「生まれてきてよかった」だ。大人に観てほしい。