国立新美術館
国立新美術館の二階展示室で『異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900 - 2005 ポンピドー・センター所蔵作品展』を観た後、同じく二階で開催されている『黒川紀章展』(3月19日まで)を観た。
これが面白い。
国立新美術館は黒川の設計だ。開館を記念して、黒川の代表作を、写真と模型と言葉で展示してある。副題に「機械の時代から生命の時代へ」とあるが、エコだのロハスだのと言われる今日的なコピーではないのだ。1959年に「機械の時代から生命の時代へ」と宣言しているのだという。50年近い歳月ではないか。
建物というのは、普段一人の設計者の作品群としてまとめてみることができないし、利用するときには設計者の意図(思想)などほとんど意識しないが、こうやって集めることで、見えてくるのだなあと思った。ユーザーとしては俯瞰的に観ることができない建物を、模型によって俯瞰的に眺められるのも面白い。
国立新美術館は大波のような外壁が特長だが、周囲の環境との調和という点では、敷地内に二・二六事件の司令部に使われた建物が残っていたので、それを保存し、調和することも、考えたそうだ。思わぬところで歴史の現場に出会った。
『黒川紀章展』を観た後で、正面から外観をあらためて眺めると、設計者の意図がなるほどと思える。
また、その後1階展示室すべてを使っている企画展『20世紀美術探険-アーティストたちの三つの冒険物語』で、この美術館の大きさを実感した。よく歩かせられる。食事を挟んだとはいえ、前に2つの企画展を観ているから無理もないのだが、ロッカーに荷物を入れてほとんど手ぶらなのに、けっこう疲れて、ところどころで休憩。
休憩室から外を眺めると、近隣のマンションがすぐ近くに見え、案外静かな場所だと気づいた。
『20世紀美術探険-アーティストたちの三つの冒険物語』は、3月19日まで。
近現代の美術を、物質というテーマで捉えた企画で、500点以上もの展示だ。先に観た『異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900 - 2005』にもあったが、マン・レイの作品は、写真でも立体でも上品なエロスだとあらためて感心したりと、やはり私は現代より近代の作品に惹かれる。
国立新美術館は、公募展のための30年来の構想だったと聞いたが、この展示を見ていると、なにより現代美術のための大きな空間がほしかったのだろうと思えてくる。
いくつもの美術展が平行して開催されているので、終日美術三昧できる贅沢な空間。春に、近隣のサントリー美術館がオープンするのも楽しみだ。
ただ、六本木という夜に賑わう立地なら、金曜日だけでなく、週にもう1日でも、たとえば水曜日も夜8時までにしてもらえたらいいのに。夜8時までの日は、朝11時からのオープンでも構わないから。
あと、少々細かい意見を。
B1のセルフサービス「カフェテリア カレ」は、メニューのわりに値段が高い。ファーストフードとコンビニを誘致したほうが、安くて美味しく、効率的だったのではないか?
1階の円錐柱の中にある女子トイレのユニバーサルデザインには、ちょっと難がある。長くなるので、これはまた改めて別の場所で。
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